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ウインターツーリズム150周年  150 Years of Winter Tourism.

アルプスを中心とするスイス山岳リゾートのハイライトとなる冬の観光(ウィンターツーリズム)。スキー、スノーボード、スノーシュー、雪ソリ、スケート、クロスカントリー、ウィンターハイキングなど、さまざまなスノーアクティビティを楽しむため、毎年、多くの観光客が訪れます。冬ならではの魅力はアクティビティだけでなく、晴天率が高く、陽光ふりそそぐ澄み切った青空と、名峰や村などすべてが雪化粧をしてきらめく白銀の世界。のんびり日光浴をしたり、温泉に入ったり、そんな爽快なスイスアルプスの冬を満喫しているのです。

現在はトップシーズンとされている冬季の観光が、スイスでスタートしたのが1864年のこと。サン・モリッツのホテルオーナーの発案で英国人ゲストにおこなった賭けがきっかけで、スイスの冬季観光の素晴らしさが広がり、今では世界を代表する冬季観光のデスティネーションとなりました。ウィンターツーリズム150周年を祝う今シーズンは、記念品や記念本の発売のほか、発祥の地でもあるサン・モリッツやダヴォス、グリンデルワルトなどを中心にさまざまなイベントも予定されています。

クラシックポスター・ギャラリー


150年の歴史
1864年  ウィンターツーリズムの幕開け
そもそもスイスの山岳地での観光は、19世紀に英国を中心としたヨーロッパの上流階級でアルピニズム(アルプス登山)がブームとなり、世界中から訪れる登山客たちのため、風光明媚な山間の村々に続々と登山鉄道やケーブルカーなど山岳交通が誕生し、ホテルが建設されていったことに始まります。そのため、しばらくはスイスアルプス観光は夏季だけのもので、ホテルも夏季のみの営業でした。そんな状況を一変させたのが、サン・モリッツでホテル(現・クルムホテル)を経営していたヨハネス・バドルッツでした。メインの顧客であった英国人たちが抱いていた冬のイメージは悪く、曇天のため寒くて暗い日々、といったものでした。スイスアルプスの冬はまったくイギリスの冬と違うということを知ってもらうため、彼は秋に訪れていた英国人と「太陽があふれる冬のスイスではシャツ1枚でも過ごせるくらいだ。もし冬のスイスに満足できなかったらお代はなしでいい」と賭けをしました。そしてクリスマスにやってきた英国人ゲスト一行は、あまりの素晴らしさに感動し、サンサンと輝く太陽と青空、白い雪を満喫し、イースター(3月)の頃、真っ黒に日焼けしてリラックスしてロンドンへと帰ったそうです。以来、冬のアルプスの魅力が評判となり、毎冬のようにゲストが訪れ、サン・モリッツでの冬季観光がスタートしました。1878年のクリスマスイブにはクルムホテルのダイニングルームにスイス初となる電気の灯りがともされました。

1883年  雪ソリの楽しみ
サン・モリッツでスイス初の冬季観光がスタートした翌年の1865年には、同じように英国人観光客に人気があったダヴォスでも最初の冬季ゲストを迎えました。とくに、スイスアルプスでは昔から冬の移動/運搬手段であり、冬の定番の遊びでもあった雪ソリ(トボガン)は、青空のもとでの楽しむスノースポーツとして英国人観光客を魅了しました。1872年にはサン・モリッツのクルムホテルの裏にゲストが楽しむための人工のソリコースがつくられ、1883年にはダヴォスにスイス初のソリクラブ「ダヴォス・トボガン・クラブDavos Tobog-gan Club」が誕生し、ダヴォス~クロスタース間で最初の国際ソリレースが開催されました。

1888年  ユングフラウ地方のウィンターツーリズム
ユングフラウ地方(ベルナーオーバーラント地方)で冬季観光が始まるのは1888年のこと。グリンデルワルト村の中心にあった「ホテル・ベアHotel Bear」が冬季営業をスタート。ホテルの前に設置された特設リンクでのスケートやカーリング、山の斜面を使ったコースが豊富な雪ソリ、スキーなどを楽しむ観光客で賑わうようになりました。1890年にはベルナーオーバーラント鉄道、1893年にシーニゲプラッテ鉄道とヴェンゲルンアルプ鉄道、1912年にユングフラウ鉄道が開通するなど、山岳鉄道が次々と開通するとともにホテルが続々オープンしていきました。

1893年  スキーの流行
1893年にグラールス州でスイスで最初のスキークラブが発足。1902年にはグラールスとベルンのグルテン山で最初のスキーレースが開催され、1904年には15のスキークラブ、700人のメンバーからなるスイススキー協会が誕生(現在では770クラブ、11万人のメンバー)しました。1905年には最初の公式スイススキー大会がグラールスで開かれ、1910年頃にはダヴォスで女性たちのスキーヤーが登場しました。

1906年  氷上のレース
1906年3月1日。13人の冒険スキーヤーがサン・モリッツ村のポストプラッツ(郵便局前広場)から馬にロープをつないで牽引させて、隣村のチャンプフェーまで行き、サン・モリッツに戻ってくるというレースを開催。この約10kmの伝説的なレースが翌年から凍ったサン・モリッツ湖の氷上で開催され、現在まで毎年続くサン・モリッツを代表する冬のトップイベント「ウィンター・ターフ(雪競馬)」となり、今も多くの観客を熱狂させています。

1928年  サン・モリッツ&ツェルマット
スイスを代表する二大山岳リゾートとして知られるサン・モリッツとツェルマット。1928年、サン・モリッツが冬季オリンピックの会場となり、さまざまなウィンタースポーツの施設がつくられ、スイスを代表する冬季観光の聖地としての名声を轟かせました。オリンピック開催中には27各国から約330人のジャーナリストが集結し、オリンピックの熱戦とともにエンガディン地方の冬の魅力を世界に伝えました。(サン・モリッツは1948年にも2度目の冬季オリンピック会場にも選ばれており、1928年の時と同じスタジアムを利用しました)。

時を同じくして1928年、マッターホルンを抱く有名山岳リゾートのツェルマットへ結ぶフィスプ=ツェルマット鉄道(現・マッターホルン・ゴッタルド鉄道)が冬季運行を始め、ツェルマットの冬季観光へのゲートウェイが開かれました。翌年の1929年には夏季のみの運行で開通していたゴルナーグラート鉄道も、リッフェルアルプまたはリッフェルボーデンまでの冬季運行をスタートしました

1934年  スキーリフトの開発
1920年代にダヴォスのスキースクールで調査した結果、1時間のレッスンのうち、スキー滑走時間がわずか6分で、斜面をあがっていくのに54分かかっているということが分かりました。そんな状況を解決すべく、ダヴォスのホテルオーナーのレオナルド・フォップ氏が、チューリヒの技術者エルンスト・グスタフ・コンスタム Ernst Gus-tav Con-stamに依頼して、ロープをひっぱってスキーヤーをゲレンデの上に運ぶという、現在のTバーリフトの原型となるJバーリフトを設営。これがスイス最初のスキーリフトで、世界初のTバーリフトとなりました。

1987年  幻のスノーボード世界選手権
サン・モリッツで1987年にヨーロッパ初となるスノーボード世界選手権が開催されました。1990年に誕生する国際スノーボード連盟(ISF) が開催した1993年からの大会や国際スキー連盟(FIS)が1996年から主催しているスノーボード世界選手権にさきがけて開催されたもので、ISFやFISの冠のない幻の世界選手権となりました。今でも、世界的に重要なスノーボードやスキーの大会やイベントはスイスで頻繁に開催されています。

2015年  ウインターツーリズム150周年